その残業、違法かも?36協定・固定残業代・名ばかり管理職の見分け方
「みなし残業だから、何時間働いても給料は同じ」「管理職になったから残業代はつかない」——そう説明されて、なんとなく納得していませんか?
実はこうした説明の中には、法律的には通らないものがかなり混ざっています。違法な働かせ方だと気づけば、未払い分の残業代を請求できる可能性がありますし、「この会社を離れるべきか」の判断材料にもなります。
この記事では、自分の残業が違法かどうかを見分けるポイントを、チェックリスト形式から順に解説します。
この記事は2026年7月時点の情報です。法律・制度は変更される場合があります。個別のケースについては労働基準監督署や弁護士にご確認ください。
30秒チェック:ひとつでも当てはまったら要注意

| チェック項目 |
|---|
| 残業が月45時間を超えるのが当たり前になっている |
| 「みなし残業だから」と言われ、何時間働いても給料が変わらない |
| 契約書・求人票に固定残業代の時間数や金額が書かれていない |
| 店長・リーダーの肩書きはあるが、採用や予算の権限はなく残業代もない |
| 「年俸制だから残業代はない」と言われた |
| タイムカードを定時で切ってから働く習慣がある |
| 22時以降に働いても深夜手当がつかない |
ひとつでも当てはまるなら、違法状態の可能性があります。以下で順番に理由を説明します。
残業の基本ルール:36協定と上限規制

大前提として、法律上の労働時間は1日8時間・週40時間まで。これを超えて働かせるには、会社と労働者代表が36協定(サブロク協定)を結んで労基署に届け出る必要があります。36協定なしの残業は、その時点で違法です。
さらに36協定があっても、残業時間には法律上の上限があります。
| 区分 | 上限 |
|---|---|
| 原則 | 月45時間・年360時間 |
| 特別条項付き(繁忙期など) | 年720時間以内・月100時間未満(休日労働含む)・2〜6か月平均80時間以内 |
| 月45時間を超えられる回数 | 年6回まで |
「毎月60〜80時間の残業が常態化している」ような職場は、特別条項があっても違法の可能性が高い状態です。月45時間・年360時間という数字だけでも覚えて帰ってください。
固定残業代(みなし残業代)の合法・違法の見分け方

固定残業代の制度そのものは合法です。ただし、合法と認められるには条件があります。
合法となる条件
- 基本給と固定残業代部分が明確に区分されている(金額・時間数が明示されている)
- 設定時間を超えた分は別途支払われる
違法・無効の可能性が高いパターン
- 「基本給に残業代を含む」とだけ書かれ、何時間分・いくら分か不明
- みなし時間を超えて働いても一切追加が支払われない
- 求人票に固定残業代の記載がなかったのに、入社後に「含まれている」と言われた
- みなし時間が月45時間を超える設定になっている(36協定の原則上限を超える設計自体が問題視されます)
固定残業代が無効と判断されると、「固定残業代」とされていた金額も基礎賃金に組み込んで残業代を計算し直せるため、請求できる金額が大きく膨らむケースがあります。
「管理職だから残業代なし」は本当?名ばかり管理職

残業代が不要になるのは、労働基準法上の「管理監督者」だけです。管理監督者かどうかは肩書きではなく、実態で判断されます。
管理監督者と認められる目安(すべて必要)
- 経営に関わる権限:採用・人事・予算などの重要な決定に関与している
- 労働時間の裁量:出退勤時刻を自分で決められる
- 相応の待遇:一般社員と明確に差のある給与・手当
「店長」「マネージャー」の肩書きがあっても、シフトに縛られ、採用権限もなく、給料も平社員とほぼ同じ——という場合は「名ばかり管理職」であり、残業代の支払い対象です。
なお、本物の管理監督者であっても深夜割増(22時〜翌5時)と年次有給休暇は適用されます。「管理職だから深夜手当もなし」は誤りです。
「年俸制」「裁量労働制」「歩合制」の誤解

年俸制:残業代の支払い義務はなくなりません。年俸に固定残業代を含める場合も、前述の「明確な区分」が必要です。
裁量労働制:対象にできる業務は法律で限定されています(研究開発・記事の取材編集・システム設計など)。営業や一般事務に裁量労働制は原則適用できません。また、裁量労働制でも深夜・休日の割増賃金は支払い対象です。導入には本人の同意も必要です。
歩合制・完全歩合:歩合給でも残業代は発生します(計算方法は通常と異なります)。「売れなければ残業代もなし」は誤りです。
違法だと分かったら:取れる行動は3つ

①記録を取る(今日から)
出退勤時刻・業務メールの送信時刻・タイムカードの写真など、働いた時間の証拠を集めます。違法かどうかの最終判断より先に、証拠の確保が最優先です。証拠の集め方と残業代の計算方法はこちらにまとめています。

②無料の窓口に相談する
労働基準監督署は、36協定違反・残業代未払いといった法違反に強い機関です。何をどこまでしてくれるかはこちらで解説しています。

③この会社で働き続けるかを考える
違法な労務管理を続ける会社は、残業以外の面でも従業員を大切にしていない可能性が高いもの。「頑張って耐える」以外の選択肢を持っておくことも、自分を守る手段のひとつです。

よくある質問

契約書に「みなし残業40時間」とあれば、40時間までは我慢するしかない?
40時間分の対価は固定残業代として支払われていますが、41時間目からは追加の残業代が必要です。また、固定残業代の金額・時間数が明示されていない場合は、固定残業代自体が無効になる可能性があります。
36協定があるかどうかはどうやって確認できますか?
36協定は事業場の見やすい場所への掲示や書面交付などで労働者に周知することが義務付けられています。見たことがなければ、会社に確認するか、労基署に相談してください。
自分が「管理監督者」かどうか分かりません。
肩書きではなく、①経営への関与②出退勤の裁量③相応の待遇、の実態で判断されます。3つのどれかが欠けているなら、管理監督者ではない可能性があります。
違法だと分かったけど、会社と揉めたくありません。
在職中に請求するかどうかは選べます。記録だけ確保しておいて、退職後に請求する方法もあります(時効は3年)。
まとめ
- 残業の上限は原則月45時間・年360時間。36協定なしの残業はそれ自体が違法
- 固定残業代は金額・時間数の明示+超過分の支払いがなければ無効の可能性
- 「管理職だから」は権限・裁量・待遇の実態がなければ通らない。深夜割増は管理職にも必要
- 年俸制・裁量労働制・歩合制でも残業代は発生する
- 違法に気づいたら、まず記録の確保。請求は在職中でも退職後でもできる
「うちの会社では普通だから」は、合法である理由になりません。まずはチェックリストで現状を確認するところから始めてください。
※本記事は2026年7月時点の一般的な情報です。法律・制度は変更される場合があります。個別のケースの判断は労働基準監督署・弁護士など専門家にご相談ください。
