「給付金が最大28ヶ月もらえる」は本当?傷病手当金+失業手当の仕組みと注意点
「退職後、給付金が最大28ヶ月もらえる」——SNSや広告で、こうした宣伝を見たことがあるかもしれません。
結論から言うと、傷病手当金と失業手当を正しい順番で利用すれば、条件次第で受給できる期間の合計が長くなること自体は事実です。ただし、これには「実際に働けない状態であること」という大前提があり、誰でも自動的に28ヶ月もらえるわけではありません。
そして、この仕組みを利用して高額な手数料を取る「給付金サポート業者」には、国の機関が注意喚起を行っています。虚偽の申請は不正受給にあたり、失業手当では受け取った額の最大3倍の返還を求められることもあります。
この記事では、「最大28ヶ月」という数字の中身と、その条件、そして注意点を正確に整理します。
※本記事は2026年7月時点の情報をもとに作成しています。制度の内容・条件は変更される場合があるため、最新情報は加入している健康保険・ハローワークでご確認ください。
※受給できるかどうか、いくら受け取れるかは、健康保険やハローワークが個別に判断します。この記事は受給を保証するものではありません。
「最大28ヶ月」の内訳とは

「最大28ヶ月」という数字は、性質の異なる2つの制度を、時期をずらして順番に利用することで算出されています。
| 制度 | 最大の期間(目安) |
|---|---|
| 健康保険の傷病手当金 | 支給開始から通算1年6か月(約18か月) |
| 雇用保険の失業手当(就職困難者・45歳未満・被保険者期間1年以上) | 所定給付日数300日(約10か月) |
この2つを足すと、約28か月になります。なお、45歳以上65歳未満の就職困難者であれば失業手当は360日(約12か月)となり、合計はさらに長くなる場合もあります。年齢や雇用保険の加入期間によって失業手当の日数は変わるため、「28ヶ月」はあくまで特定の条件がそろった場合の目安です(傷病手当金の18か月には、在職中に受給した期間も含まれます)。
ここで最も重要なのは、この2つの制度が求める状態が正反対であるという点です。
- 傷病手当金:病気やけがで「働けない」状態が条件
- 失業手当:すぐに「働ける」状態が条件
つまり、同じ期間に両方を受け取ることは原則できません。「働けない期間は傷病手当金」「働ける状態に回復してからは失業手当」と、時期をずらして受け取るからこそ、合計の期間が長くなる、という仕組みです。
傷病手当金(最大約18か月)の条件

傷病手当金は、健康保険に加入している会社員などが、業務外の病気やけがで働けず、十分な給与を受け取れない場合に支給される制度です。
主な条件は次のとおりです。
- 業務外の病気やけがで療養している
- 仕事に就くことができない状態である
- 連続する3日間を含み、4日以上仕事を休んでいる
- 休んだ期間について十分な給与を受けていない
支給額は、原則として支給開始日前12か月の標準報酬月額の平均をもとにした日額の3分の2相当。支給期間は、同じ病気・けがについて支給開始日から通算1年6か月です。
退職後も継続して受け取るには、退職日(資格喪失日の前日)までに継続して1年以上の被保険者期間があり、退職日時点で傷病手当金を受けているか、受けられる状態であることなどが必要です。退職日に出勤すると、退職後の継続給付を受けられない場合があります。また、退職後にいったん働ける状態になって給付が終わると、その後に再び働けなくなっても継続給付は再開されない点にも注意が必要です。
「仕事に就けない状態」かどうかは、本人の希望ではなく、医師の意見や実際の業務内容などをもとに審査されます。単に「働きたくない」という理由では支給されません。
失業手当・就職困難者(最大300〜360日)の条件

失業手当(雇用保険の基本手当)の給付日数は、離職理由・年齢・加入期間で決まります。自己都合退職の場合、通常は90〜150日です。
ただし、雇用保険には「就職困難者」という区分があり、該当する場合は給付日数が長くなります。
| 雇用保険の加入期間 | 45歳未満 | 45歳以上65歳未満 |
|---|---|---|
| 1年未満 | 150日 | 150日 |
| 1年以上 | 300日 | 360日 |
就職困難者に該当する主な例は、次のとおりです。
- 身体障害者手帳(身体障害)・療育手帳(知的障害)・精神障害者保健福祉手帳(精神障害)をお持ちの方
- 手帳がなくても、統合失調症・そううつ病・てんかんにより、医師の診断書等で確認できる方
- 保護観察中の方、社会的事情により就職が著しく阻害されている方など
ただし、手帳や診断名があれば自動的に就職困難者になるわけではありません。受給資格が決まる時点での状態などを踏まえて、該当するかどうかの最終判断はハローワークが行います。また、失業手当を受給するには、就職困難者であっても「働ける状態で、求職活動を行っていること」が前提です。
なぜ「順番に」受け取れるのか

働けない状態から回復するまでの流れを整理すると、制度上は次のようになります。
- 在職中に体調を崩し、休職する:傷病手当金を受給
- 回復しないまま退職する:条件を満たせば、退職後も傷病手当金の継続給付を受けられる
- 退職後、まだ働けない間:失業手当の「受給期間延長」を申請しておく(本来1年の受給期間を、働けない日数に応じて最長4年まで延長できる場合がある)
- 働ける状態まで回復した:延長の理由が終わったことをハローワークに届け出て、失業手当の受給手続きに進む
この流れは、「働けない期間は傷病手当金」「働けるようになってからは失業手当」と、それぞれの制度の趣旨どおりに、時期をずらして利用しているにすぎません。だからこそ制度上成立します。
逆に言えば、この流れが成立するのは「実際に働けない期間があった」場合だけです。働けるのに「働けない」と偽って申請すれば、それは不正受給になります。
大前提:誰でも28ヶ月もらえるわけではない

「最大28ヶ月」という数字だけが独り歩きしていますが、これを受け取るには、次のすべてを満たす必要があります。
- 実際に、病気やけがで働けない状態であること(医師の判断と健康保険の審査が必要)
- 退職前に、傷病手当金の受給条件を満たしていること(加入期間・退職日の過ごし方など)
- 失業手当の段階で、就職困難者に該当すること(手帳や医師の診断等。ハローワークが判断)
- 各種の申請を、期限内に正しく行うこと
これらのどれか一つでも欠ければ、「28ヶ月」にはなりません。「28ヶ月」は、条件がすべてそろった一部の人に当てはまる最大値であり、標準的にもらえる金額でも期間でもないことを理解してください。
「給付金サポート業者」への注意

ここまで説明した内容は、すべて無料で、公的窓口に相談しながら自分で手続きできるものです。
一方で、この仕組みを利用して、
- 「給付金が最大◯百万円受け取れる」
- 「退職前に相談すれば受給額を増やせる」
- 「成功報酬として受給額の10〜15%」
とうたう民間の「退職サポート」「社会保険給付金サポート」業者が存在し、国民生活センターや労働局などが注意喚起を行っています。
特に問題なのは、次のような点です。
- 働ける状態なのに「働けない」と申請させるなど、事実と異なる申請を勧められるケースがあります。これは不正受給です
- 失業手当の不正受給は、受給額の返還に加えて最大2倍の納付命令——あわせて「3倍返し」と呼ばれるペナルティがあり、以後の支給も停止されます
- 傷病手当金の不正受給は、支給の取り消し・返還に加え、悪質な場合は詐欺罪など刑事上の責任を問われる可能性があります
- 申請するのはあくまで本人です。業者に勧められた場合でも、不正受給の責任は本人が負います
- 業者に支払った高額な手数料は、トラブルになっても取り戻せないことがあります
正しい相談先

お金を払わなくても、次の窓口で無料で相談できます。
| 相談したいこと | 窓口 |
|---|---|
| 傷病手当金 | 加入している健康保険(協会けんぽ・健保組合) |
| 失業手当・就職困難者・受給期間延長 | ハローワーク |
| 体調・働けるかどうか | 主治医・医療機関 |
| 休職制度 | 勤務先の人事・労務 |
| 社会保険手続きの専門的な相談 | 社会保険労務士(国家資格) |
体調不良で退職を考えている場合は、退職届を出す前に、加入している健康保険と会社の休職制度を確認しておくことが大切です。退職してからでは間に合わない条件があります。
よくある質問

本当に28ヶ月もらえるのですか?
条件がすべてそろえば、傷病手当金(最大約18か月)と失業手当(就職困難者・最大約10か月)を時期をずらして受け取ることで、合計の期間が約28か月になる場合があります。ただし、これは実際に働けない状態が続き、就職困難者にも該当するなど、複数の条件を満たした一部の人の最大値です。
働けるのに「働けない」ことにして申請してもいいですか?
いけません。事実と異なる申請は不正受給にあたります。失業手当では受け取った額の最大3倍の返還、傷病手当金では返還や刑事責任を問われる可能性があります。
給付金サポート業者に頼めば確実にもらえますか?
確実ではありません。受給できるかどうかを判断するのは、業者ではなく健康保険やハローワークです。業者に高額な手数料を払っても、不正な申請を勧められればリスクを負うのは本人です。まずは公的窓口に無料で相談してください。
手帳を持っていないと就職困難者になれませんか?
手帳がなくても、統合失調症・そううつ病・てんかんなどにより医師の診断書等で確認できる場合は対象になり得ます。ただし最終判断はハローワークです。手帳の取得は失業手当のためだけに行うものではなく、治療方針も含めて主治医とよく相談してください。
まとめ
- 「最大28ヶ月」は、傷病手当金(最大約18か月)+失業手当・就職困難者(最大約10か月)を時期をずらして受け取る仕組み
- 両者は「働けない/働ける」と条件が正反対のため、同時ではなく順番に受給する
- 受け取るには、実際に働けない状態・医師の判断・就職困難者の条件・期限内の申請がすべて必要。誰でももらえる金額ではない
- 「受給額を増やせる」とうたう業者には注意。不正受給は失業手当で3倍返し。相談は健康保険・ハローワーク・主治医などの無料窓口へ
制度は、困ったときのために国が用意した権利です。実際に必要な状況であれば、正しく、正直に使ってください。それが、あなた自身を守る一番の方法です。
※本記事は2026年7月時点の情報です。制度の内容・条件は変更される場合があります。最新情報は加入している健康保険・ハローワーク・日本年金機構等の公式情報でご確認ください。
