退職証明書とは?離職票との違い・もらい方・発行してくれないときの対処法
転職先から「退職証明書を出してください」と言われて、「離職票とは違うの?」と戸惑っていませんか。
退職証明書は、会社が「この人は退職しました」と証明する私的な書類で、ハローワークが関わる離職票とはまったく別物です。そして重要なのは、労働者が請求したら、会社は遅滞なく発行する法的義務がある(労働基準法22条)ということ。「うちはそういうの出してない」は通りません。
この記事では、退職証明書の役割、離職票との違い、もらい方(依頼文例つき)、記載項目の選び方、発行してくれないときの対処法まで、まとめて解説します。
この記事は2026年8月時点の一般的な情報です。個別のトラブルは労働基準監督署・労働局にご相談ください。
退職証明書とは:会社が発行する「退職の事実」の証明書

退職証明書は、在籍していた会社が発行する、退職の事実や在籍時の情報を証明する書類です。決まった公式様式はなく、会社が作成します(厚生労働省がモデル様式を公開しています)。
労働基準法22条により、労働者が請求した場合、会社は遅滞なく交付する義務があります。ここでのポイントは3つ:
- 請求できる期間は退職後2年間です(時効)
- 請求できる回数に制限はありません。紛失したら再発行も請求できます
- 記載できるのは労働者が請求した項目だけ。請求していない事項(例:退職理由)を会社が勝手に書くことは禁止されています
この「請求した項目だけ」ルールが後で効いてきます(後述)。
離職票との違い:発行元も用途も別物

| 退職証明書 | 離職票 | |
|---|---|---|
| 発行元 | 会社(私文書) | ハローワーク(公文書。会社経由で届く) |
| 主な用途 | 転職先への提出、国保・年金の切り替え(離職票が届く前)など | 失業保険の受給手続き |
| もらえる時期 | 請求すれば退職日以降すぐ(法定の交付義務は退職後。在職中の「退職見込証明書」は会社の任意対応) | 退職後おおむね2週間前後 |
| 法的根拠 | 労基法22条(請求されたら交付義務) | 雇用保険法(原則、本人が希望したら交付) |
実務でよくあるのは、「離職票が届くまでのつなぎ」として退職証明書を使うパターンです。国民健康保険や国民年金の切り替えは退職日の翌日から14日以内が原則ですが、離職票は2週間ほど待たされます。国保の必要書類は自治体により異なり、健康保険資格喪失証明書のほか退職証明書や離職票を認める場合もあるため、事前に住所地の自治体へ確認したうえで、退職日に合わせて書類をもらっておくと切り替えがスムーズです。
失業保険の手続きには離職票が必要です(退職証明書では代用できません):

もらい方:退職前に、人事へ、項目を指定して

依頼はシンプルで、人事(または上司経由で総務)に書面・メールで請求するだけです。口頭でも有効ですが、記録の残るメールがおすすめです。
依頼メールの文例:
件名:退職証明書の発行のお願い
人事部 ◯◯様
◯月◯日付で退職いたします◯◯です。
労働基準法22条に基づき、退職証明書の発行をお願いいたします。
記載事項は「使用期間」「業務の種類」「その事業における地位」の3点でお願いします。
◯月◯日までに(退職日当日に/郵送で)受け取れますと幸いです。
ポイントは:
- 退職前に依頼(予約)しておくと、退職日当日〜直後に受け取りやすく、切り替え手続きが最速になります(法律上の交付義務が生じるのは退職後です)
- 通数は多めに(転職先提出用+役所用の2通など)。再発行も請求できますが、最初にまとめてもらう方が楽です
- 転職先から様式を指定された場合は、その様式を会社に渡して記入してもらいます
記載項目は「選べる」:退職理由を書かせない権利

労基法22条で記載を請求できる項目は次の5つ(退職時の証明の場合)です。
- 使用期間(いつからいつまで働いたか)
- 業務の種類
- その事業における地位
- 賃金
- 退職の事由(解雇の場合はその理由を含む)
そして冒頭で触れたとおり、会社は「労働者が請求した項目以外」を記載してはいけません。つまり:
- 転職先に賃金や退職理由を知られたくなければ、その項目を請求から外せます。「使用期間・業務の種類・地位のみでお願いします」でOKです
- 逆に、会社都合退職の証明を残したいときは「退職の事由」をあえて入れてもらいます。離職票の理由と食い違ったときの反証材料になります
- 解雇された場合は、解雇理由の証明書を在職中(解雇予告期間中)でも請求できます。解雇の有効性を争う場合の第一歩です
なお、転職先が退職証明書を求めるのは主に「経歴の確認」「二重就労がないかの確認」のためです。提出は法的義務ではありませんが、拒むと入社手続きが進まないことが多いため、記載項目の調整で対応するのが現実的です。
発行してくれない・遅いときの対処法

「辞めた人間に出す書類はない」と拒まれた場合の手順です。
- メールで再請求して記録を残す:「労働基準法22条に基づき◯月◯日に請求しましたが、まだ交付されていません。◯月◯日までの交付をお願いします」
- 労働基準監督署に申告する:正当な理由なく交付しない・請求していない事項を記載するのは労基法22条違反で、30万円以下の罰金の対象です。申告すると監督署から会社へ指導が入ることがあります
- 急ぎで保険の切り替えだけしたい場合:協会けんぽの加入者だったなら、日本年金機構(年金事務所)に「健康保険・厚生年金保険 資格取得・資格喪失等確認通知書」を請求できることがあります。健康保険組合の場合は加入していた組合に確認を。マイナポータルで資格喪失情報を確認できることもあります。役所の窓口で「退職証明書がもらえない」と相談してください
嫌がらせ気味の対応をされている場合は、他の退職トラブルと合わせて記録を残し、労働局の総合労働相談コーナーへ。関連する対処はこちらにもまとめています:退職の引き止め・嫌がらせへの対処
よくある質問

退職証明書はいつまでに発行してもらえますか?
法律上は「遅滞なく」です。明確な日数の定めはありませんが、実務では数日〜1週間程度が一般的です。急ぎの事情(国保の切り替え、転職先の期限)があるなら、依頼時に期限を明示しましょう。
在職中に「退職見込み」の証明はもらえますか?
もらえる場合があります。転職先が入社前に退職(予定)証明を求めるケースでは、「退職見込証明書」として対応してくれる会社が多いです。なお、解雇予告を受けた人は、退職日前でも解雇理由証明書を請求できます(労基法22条2項)。
倒産して会社がもう存在しません
会社が消滅している場合、退職証明書の発行は現実的に困難です。破産管財人が対応してくれる場合もありますが、用途に応じて代替書類(雇用保険被保険者離職票、資格喪失証明書、源泉徴収票など)で足りるか、提出先に相談してください。
退職証明書に有効期限はありますか?
書類自体に有効期限はありませんが、提出先が「発行後3か月以内」などの条件を付けることがあります。請求権の時効は退職後2年なので、必要になりそうなら早めに取得しておくのが安全です。
アルバイト・パートでも請求できますか?
できます。労基法22条は雇用形態を問いません。短期間の勤務でも、請求すれば会社は交付義務を負います。
まとめ
- 退職証明書は会社が発行する私文書。失業保険用の離職票とは別物
- 労働者が請求したら、会社は遅滞なく交付する法的義務がある(労基法22条・請求は退職後2年まで・再発行OK)
- 記載項目は自分で選べる。退職理由や賃金を書かせない権利があり、逆に会社都合の証明として使うこともできる
- 離職票を待たずに国保・年金を切り替える「つなぎ書類」として優秀。退職前に依頼して退職日に受け取るのが最速
- 拒否されたら:メールで記録→労基署へ申告(罰則あり)。保険切り替えだけなら資格喪失証明書などの代替も
退職証明書は、知らないと「会社の善意で出してもらう書類」に見えますが、実際は退職から2年以内に請求すれば、会社が交付義務を負う、あなたの権利の書類です。拒まれたら記録を残して労基署へ——この順番だけ覚えて、退職手続きのチェックリストに1行、加えておいてください。
※本記事は2026年8月時点の一般的な情報です。個別のトラブルは労働基準監督署・労働局の総合労働相談コーナーにご相談ください。
