失業保険はいくらもらえる?賃金日額から3ステップで計算する方法
「失業保険って、だいたい給料の6割くらい?」——ざっくりそう言われますが、実際の金額は人によってかなり変わります。賃金が低い人ほど割合が高くなる仕組みで、さらに年齢ごとの上限額もあるからです。
計算そのものは、実は3ステップだけです。この記事では2026年8月1日改定の最新の数値を使って、自分がいくら受け取れるか見当がつくところまで案内します。
この記事は2026年8月時点の情報です。金額は厚生労働省が公表した令和8年8月1日適用の資料に基づきます。上限額・下限額と計算式は原則として毎年8月1日に改定されるため、最新の数値と正式な金額は必ず管轄のハローワークでご確認ください。
計算は3ステップで終わる

失業保険(雇用保険の基本手当)の金額は、次の順で決まります。
- 賃金日額を出す(辞める前の1日あたりの賃金)
- 賃金日額に給付率をかけて、基本手当日額を出す(1日あたりの手当)
- 基本手当日額に所定給付日数をかけて、受け取れる総額の目安を出す
つまり、
基本手当日額 = 賃金日額 × 給付率
総額の目安 = 基本手当日額 × 所定給付日数
という2本の式に集約されます。順番に見ていきましょう。
なお、正式な金額は受給資格が決定したときに算出され、受給資格者証(または受給資格通知)に記載されます。賃金日額は第1面の14欄、基本手当日額は19欄です。この記事の計算はあくまで目安として使ってください。
ステップ1:賃金日額を出す

賃金日額とは、「離職前6か月に毎月きまって支払われた賃金の合計 ÷ 180」です。
賃金日額 = 離職前6か月の賃金の合計 ÷ 180
ここでのポイントは3つあります。
1. 対象になるのは「離職直前の6か月」
正確には、離職直前の賃金締切日ごとの完全な6期間に支払われた賃金を使います。欠勤や休職がある場合、賃金支払基礎日数が少ない期間がある場合、日給・時給制の場合などは計算方法が変わることがあります。自分の実際の金額は、離職票-2の賃金額欄で確認してください。
なお、よく見かける「賃金支払の基礎となった日数が11日以上(または労働時間80時間以上)」という基準は、主に受給資格に必要な「被保険者期間を1か月と数える」ときの基準です。賃金日額の算定と混同されがちなので、切り分けて覚えておくと安全です。
2. 賃金に「含むもの」と「含まないもの」
| 含む | 原則として含まない |
|---|---|
| 基本給 | 3か月を超える期間ごとに支払われる賃金(一般的な年2回の賞与など) |
| 残業手当・休日出勤手当 | 臨時に支払われた賃金(結婚祝金など) |
| 通勤手当 | 退職金 |
| 住宅手当・役職手当・家族手当など | — |
一般的な年2回のボーナスは、原則として計算に入りません。ボーナスの比率が高い会社ほど、思ったより低く出ます。ただし、「賞与」という名称だけで決まるのではなく、支給間隔や賃金としての性質によって扱いが変わることがあります。
3. 額面(税引き前)で計算する
手取りではなく、社会保険料や税金を引く前の金額です。ここを手取りで計算すると、実際より低く見積もってしまいます。
例: 月給30万円(残業代・手当込み、額面)の人なら、30万円 × 6か月 = 180万円 → 180万円 ÷ 180 = 賃金日額 10,000円
ステップ2:給付率をかけて基本手当日額を出す

賃金日額が出たら、そこに給付率をかけます。
基本手当日額 = 賃金日額 × 給付率
給付率はおおむね50〜80%(離職時60歳以上65歳未満は45〜80%)。賃金日額が低い人ほど高い率が適用されます。生活の維持という制度の目的から、賃金が少なかった人ほど手厚くなる設計です。
大事なのは、給付率は段階的なパーセントではなく、計算式によって連続的に変わるという点です。「一律で給料の6割」ではありません。
2026年8月1日以降の計算式(離職時29歳以下・30〜44歳・45〜59歳に共通)
| 賃金日額 | 給付率 |
|---|---|
| 3,203円以上 5,480円未満 | 80% |
| 5,480円以上 13,490円以下 | 80%〜50%(計算式で逓減) |
| 13,490円超(上限額まで) | 50% |
逓減する区間の式は次のとおりです。
基本手当日額 = 0.8w − 0.3 × {(w − 5,480) ÷ 8,010} × w
(w=賃金日額)
上限額と下限額(2026年8月1日以降)
計算した金額には、離職日時点の年齢によって異なる上限額があります。一方、下限額(最低額)は年齢に関係なく共通です。
| 離職時の年齢 | 賃金日額の上限額 | 基本手当日額の上限額 |
|---|---|---|
| 29歳以下 | 14,900円 | 7,450円 |
| 30〜44歳 | 16,540円 | 8,270円 |
| 45〜59歳 | 18,220円 | 9,110円 |
| 60〜64歳 | 17,400円 | 7,830円 |
| 全年齢共通の下限額 | 3,203円 | 2,562円 |
ネット上の計算ツールや解説記事には、前年以前の数値が残ったままのものが多くあります。古い数値だと数百円ずれるので注意してください。
月給別の試算例

上の計算式を実際に当てはめてみます(賞与を除く月額の額面で計算。端数処理で数円前後します)。
ケース1:月給20万円・35歳
- 賃金日額:20万円 × 6 ÷ 180 = 約6,666円
- 逓減区間なので計算式を適用 → 基本手当日額 約5,036円
- 給付日数90日なら、総額は約45万円
ケース2:月給30万円・35歳
- 賃金日額:10,000円
- 基本手当日額 約6,307円
- 給付日数90日なら、総額は約57万円
ケース3:月給50万円・50歳
- 賃金日額:約16,666円 → 13,490円超なので給付率は50%
- 基本手当日額 約8,333円(45〜59歳の上限9,110円にはまだ届きません)
- 給付日数90日なら、総額は約75万円
ケース4:月給60万円・50歳(上限に当たる例)
- 賃金日額:20,000円 → 45〜59歳の賃金日額の上限18,220円を超えます
- 基本手当日額は上限額の9,110円
- ここから上は、月給がいくら高くても金額は変わりません
気づいてほしいことは、月給が3倍になっても手当は3倍にならない、という点です。給料が高かった人ほど、生活費の落差が大きくなります。辞める前に、この落差を数字で把握しておくことが何より大事です。
貯金の準備については退職前に必要な貯金額も参考にしてください。
総額は「日額 × 所定給付日数」で決まる

1日あたりの金額が出たら、あとは何日分もらえるかです。
総額の目安 = 基本手当日額 × 所定給付日数
所定給付日数は、離職理由・年齢・雇用保険の加入期間で決まります。
- 自己都合など一般の受給資格者:加入期間に応じて90日/120日/150日
- 倒産・解雇などの特定受給資格者等:年齢と加入期間に応じて、より長くなる場合があります
- 就職困難者:300日/360日などの区分があります
同じ日額でも、離職理由が変われば総額は倍以上変わります。日数の詳しい早見表は失業手当のもらい方完全ガイドにまとめています。
注意したいのは、「所定給付日数=必ず受け取れる日数」ではないという点です。
- 受給できる期間(原則、離職日の翌日から1年)を過ぎると、残っていても受け取れません
- 安定した職業に就いた日以後は基本手当の対象外になります。就職日前日までの分は認定され得ますし、短時間・短期の就労中の扱いは勤務条件によって異なります。早く決まった場合は再就職手当の対象になる可能性があります
- 正当な理由なく認定日に来所しなかった場合、原則として前回の認定日から欠席した認定日当日までは認定を受けられません(認定日に行けないときの対処法)
なお、失業保険は非課税です。所得税・住民税はかかりません。ただし国民健康保険料の軽減判定や扶養の判定では扱いが異なるため、失業保険と税金の関係も確認しておいてください。
よくある質問

ボーナスは計算に入りますか?
一般的な年2回の賞与は、3か月を超える期間ごとに支払われる賃金として、原則入りません。ただし「賞与」という名称だけで決まるのではなく、支給間隔や賃金としての性質によって扱いが変わることがあります。実際の金額は離職票-2の賃金額欄で確認してください。
退職直前に残業が多かった/少なかった場合はどうなりますか?
対象期間の残業代が減れば賃金日額は下がります。ただし、基本手当日額は給付率や上限額・下限額の影響も受けるため、残業代の減った割合とそのまま同じ比率で下がるとは限りません。
手取りではなく額面で計算するのはなぜですか?
制度上、賃金日額は税・社会保険料を控除する前の賃金で計算されるためです。そのぶん、手取りと比べたときの実質的な補填率は、数字の印象より高くなります。
パート・アルバイトでも計算方法は同じですか?
同じです。ただし、賃金支払の基礎となる日数が少ない期間がある場合など、計算の扱いが変わることがあります。加入要件については週20時間未満でも雇用保険に入れる?を参照してください。
計算ツールの結果と実際の金額が違います。なぜですか?
多くのツールは前年以前の上限額・計算式のまま更新されていないことがあります。これらは原則として毎年8月1日に改定されるため、ズレの原因になります。正式な金額は受給資格者証(または受給資格通知)でご確認ください。
給付制限がある場合、金額は減りますか?
1日あたりの金額は変わりません。変わるのは受け取り始める時期です。給付制限中は支給対象外になるだけで、日額そのものが減るわけではありません(失業保険はいつ振り込まれる?)。
まとめ
- 計算は 賃金日額 → 給付率 → 基本手当日額 → ×所定給付日数 の順
- 賃金日額 = 離職前6か月の賃金の合計 ÷ 180。一般的な年2回の賞与は原則含まず、額面で計算する
- 給付率はおおむね50〜80%(60歳以上65歳未満は45〜80%)。段階ではなく計算式で連続的に変わる
- 上限額は年齢区分ごと(29歳以下7,450円/30〜44歳8,270円/45〜59歳9,110円/60〜64歳7,830円)、下限額は全年齢共通2,562円(いずれも2026年8月1日以降)
- 総額は日額 × 所定給付日数。離職理由で日数が大きく変わる
- 正式な金額は受給資格者証(受給資格通知)に記載される
数字を先に知っておくだけで、辞めたあとの計画はずいぶん立てやすくなります。まずは直近6か月の給与明細を並べるところから始めてください。
※本記事は2026年8月時点の情報です。金額は厚生労働省が公表した令和8年8月1日適用の資料に基づきます。上限額・下限額・計算式は原則として毎年改定されます。個別の金額は管轄のハローワークにご確認ください。
