退職金の計算方法【自分でできるシミュレーション】計算式の型と手取りの出し方
退職金の計算は、会社ごとに式が違うせいで「よく分からないもの」扱いされがちですが、実は世の中の計算式は4つの型にほぼ集約されます。自分の会社がどの型かさえ分かれば、電卓で概算できます。
この記事では、4つの計算式の型、自分で概算する手順、そして意外と簡単な税金と手取りの計算まで、順番に解説します。
実際の金額は勤務先の退職金規程によります。本記事は概算の方法を示すもので、正確な金額は会社への試算依頼で確認してください。
退職金の計算式は4つの型に集約される

型1:基本給連動型(最も多い伝統型)
退職時の基本給 × 勤続年数別の支給率 × 退職事由係数
例:基本給30万円 × 支給率10.0(勤続15年) × 自己都合係数0.8 = 240万円
支給率表は退職金規程に載っています。勤続年数が長いほど支給率が急に伸びる設計が一般的です。自己都合係数は0.6〜0.9程度が多め。
型2:ポイント制(近年の主流)
(勤続ポイント+役職・等級ポイントの累計)× ポイント単価 × 退職事由係数
例:累計2,500ポイント × 単価1万円 × 0.9 = 225万円
毎年の等級・評価でポイントが積み上がる方式。給与明細や人事システムで自分の累計ポイントを確認できる会社もあります。
型3:定額制(勤続年数だけで決まる)
勤続10年なら◯万円、と表で決まっているシンプルな方式。小規模な会社に多い型です。
型4:中退共など共済・外部積立型
掛金月額と納付月数を「基本退職金額表」に当てはめて算出する基本退職金(+運用状況による付加退職金)。単純な掛金×月数の積立額ではなく、加入期間に応じた退職金カーブで決まります(12〜23か月は掛金総額を下回り、43か月以降は利息分が上乗せ)。会社の裁量が入らず、中退共から直接あなたの口座に振り込まれるのが特徴です。給与明細や入社時の書類に「中退共」の記載があればこの型です。
自分で概算する5ステップ

- 退職金規程を入手する:就業規則の別規程になっていることが多いです。閲覧は労働者の権利なので、社内ポータルや総務で確認を
- 自分の型を特定する:規程の「計算方法」の条文を見て、上の4つのどれかを判定
- 変数を集める:基本給(給与明細)、勤続年数(入社日から)、支給率・係数(規程の別表)、ポイント累計(人事に照会)
- 計算する:型に当てはめて電卓一発です。自己都合退職の予定なら、必ず自己都合係数を掛けてください
- 端数月の扱いを確認:勤続「10年6か月」の6か月分を月割りで加算する規程と、切り捨てる規程があります。節目前の退職は特にここを確認
中退共の場合は、中退共サイトの試算ツールに掛金月額と納付月数を入れるだけです。掛金月額が分からなければ会社に確認してください。
会社に聞くときの言い方は「ライフプランを立てたいので、現時点の退職金の試算をいただけますか」で十分です。退職の意思を伝える必要はありません。
税金の計算:手取りはいくら残る?

退職金は税制がかなり優遇されていて、計算は3ステップです。
ステップ1:退職所得控除を計算
- 勤続20年以下:40万円 × 勤続年数(最低80万円)
- 勤続20年超:800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)
- 勤続年数の1年未満の端数は切り上げ(10年1か月→11年)
例:勤続15年 → 40万×15=600万円。勤続30年 → 800万+70万×10=1,500万円
ステップ2:課税退職所得を計算
(退職金 − 退職所得控除)× 1/2(マイナスなら課税ゼロ)
※例外:役員等以外で勤続5年以下の「短期退職手当等」は、控除後の残額のうち300万円を超える部分に1/2課税が適用されません。役員等勤続5年以下の「特定役員退職手当等」は残額全体が1/2課税の対象外です。短期勤続で高額の退職金を受ける人は注意してください。
ステップ3:税額を計算
課税退職所得に所得税率(累進)と住民税10%を適用。
実感としては:勤続15年で退職金600万円以下、勤続30年で1,500万円以下なら税金ゼロ。中小企業の相場水準(勤続年数別の相場はこちら)なら、大半の人は非課税か少額で済みます。
重要な1枚:「退職所得の受給に関する申告書」を会社に必ず提出してください。出さないと退職金の支給額全体に所得税・復興特別所得税20.42%が源泉徴収され(住民税は別途、退職所得に対して原則10%)、精算には原則確定申告が必要になります。
シミュレーション例:3人のケース

Aさん:勤続8年・基本給28万円・自己都合(基本給連動型)
支給率4.5、自己都合係数0.7 → 28万 × 4.5 × 0.7 = 約88万円。控除(40万×8=320万円)内で税金ゼロ。
Bさん:勤続22年・基本給42万円・会社都合(基本給連動型)
支給率18.0、会社都合係数1.0 → 42万 × 18.0 = 約756万円。控除は800万+70万×2=940万円 → 税金ゼロ。
Cさん:勤続12年・中退共(掛金月1万円)
納付144か月 → 基本退職金約150万円前後(+付加退職金)。控除480万円内で税金ゼロ。
3人とも税金ゼロ——これが退職金税制の実力です。数千万円クラスの大企業定年でなければ、手取り=額面に近いと考えてOKです。
計算結果と現実がズレるときのチェックポイント

- 基本給の定義:規程上の「基本給」に諸手当を含むかどうかで大きく変わります。「算定基礎額」の定義を規程で確認
- 端数月の切り捨て:あと1か月で支給率が上がるケースは退職日の調整を検討
- 懲戒・競業避止による減額条項:規程に減額・不支給条項がある場合も、常に全額不支給が有効とは限りません
- 企業年金(DB・DC)が別建て:退職一時金とは別に確定拠出年金(iDeCo移換が必要)や確定給付年金がある会社も。人事に「退職給付は一時金と年金のどちらですか」と確認を
- 試算と規程が食い違う:会社の試算書と自分の計算が大きくズレたら、根拠(適用した支給率・係数)を確認しましょう
支払時期や「振り込まれない」ときの対処はこちら:退職金がない・もらえないのは違法?
よくある質問

ボーナスは退職金の計算に入りますか?
基本給連動型では通常入りません(「退職時の基本給」ベース)。ポイント制も賞与とは独立です。賞与そのものの取り扱いは:退職とボーナスの関係
休職期間は勤続年数に入りますか?
規程によります。私傷病休職の期間を勤続年数から除外する規程が多いため、長期休職があった人は要確認です。
中退共の付加退職金とは?
運用利回りが好調なときに基本退職金に上乗せされる部分です。金額は年度により変わるため、正確な額は中退共への請求時に確定します。
確定拠出年金(企業型DC)は退職時にもらえますか?
原則60歳まで引き出せません。資格喪失後6か月以内に、転職先の企業型DC・iDeCo・一定の確定給付企業年金や通算企業年金などへの移換手続きが必要です。期限内に手続きしないと国民年金基金連合会へ自動移換され、運用されないまま手数料が引かれ続け、受給開始が遅れる原因にもなります。退職一時金とは別物として必ず手続きを。
退職金の試算を会社に頼んだら退職を疑われませんか?
「住宅ローンの審査」「ライフプラン作成」など、試算が必要な場面は退職以外にもたくさんあります。人事にとっても珍しい依頼ではないので、気にしすぎなくて大丈夫です。
まとめ
- 計算式は基本給連動・ポイント制・定額制・中退共の4型。規程で型を特定すれば電卓で概算できる
- 概算手順:規程入手→型の特定→変数集め→計算→端数月の確認
- 税金は退職所得控除(40万/70万)×1/2課税で大幅優遇。中小企業の相場水準ならほぼ非課税
- 「退職所得の受給に関する申告書」の提出だけは絶対に忘れない(出さないと20.42%源泉徴収)
- ズレの原因は基本給の定義・端数月・別建ての企業年金。試算書の根拠まで確認を
退職金は「もらってから知る」より「計算してから動く」が正解です。規程と電卓さえあれば、今夜にでも概算できます。
※本記事は2026年8月時点の一般的な情報です。計算方法・支給条件は勤務先の退職金規程により、税制は法改正により変わる場合があります。正確な金額は勤務先・税務署等にご確認ください。
