退職金の相場はいくら?【勤続年数別・中小企業】3年・5年・10年・20年の目安
「いま辞めたら、退職金はいくらもらえるんだろう?」——転職や退職を考え始めたとき、真っ先に気になる数字です。
先に大事なことを言うと、退職金に法律上の決まった額はありません。会社の退職金規程がすべてで、そもそも退職金制度がない会社も約2割あります。とはいえ、公的な調査から「世間の相場」は見えます。
この記事では、勤続年数別の目安(自己都合退職)、大企業と中小企業の差、自分の会社の退職金を正確に知る方法まで、公的調査のデータをもとに整理します。
本記事の金額は、厚生労働省「就労条件総合調査」、東京都「中小企業の賃金・退職金事情」等の公的調査をもとにした目安です。実際の金額は会社の退職金規程によって大きく異なります。
大前提:退職金は「会社の規程」がすべて

- 退職金の支払いは法律上の義務ではありません。制度の有無・計算方法・支給条件はすべて会社の退職金規程(就業規則)次第です
- 厚生労働省の調査では、退職給付制度がある企業は7〜8割前後。小規模な会社ほど「制度なし」の割合が増えます
- 多くの規程では「勤続3年以上」から支給という設計が一般的です。勤続3年未満だとゼロの会社が多いのはこのためです
- 自己都合退職に会社都合より低い支給率を定める会社が少なくありません。ただし減額の有無・割合は企業や勤続年数によって異なります(東京都調査のモデル値でも、自己都合が会社都合を下回る区分が見られます)
つまり「相場」はあくまで参考値。あなたの数字は退職金規程でしか分かりません(確認方法は後述)。
勤続年数別の目安【中小企業・自己都合退職】

東京都「中小企業の賃金・退職金事情」(モデル退職金・大学卒・自己都合退職)をもとにした、ざっくりした目安です。
| 勤続年数 | 自己都合退職の目安(大卒・中小企業) |
|---|---|
| 3年 | 約20万〜30万円 |
| 5年 | 約40万〜50万円 |
| 10年 | 約100万〜120万円 |
| 15年 | 約180万〜230万円 |
| 20年 | 約300万〜380万円 |
| 30年 | 約600万〜750万円 |
| 定年 | 約1,000万〜1,100万円 |
高校卒はこれより1〜2割低い水準が目安です。会社都合退職はこれより高い水準になる規程が多く見られますが、差の大きさは会社によります。
体感のポイント:
- 10年でようやく100万円前後。「10年勤めたのに思ったより少ない」はよくある感想ですが、これが中小企業の標準的な水準です
- 退職金は勤続年数に対して後半ほど急カーブで増える設計が多く、20年→30年で倍増します。「あと数年で節目」の人は、その差額も判断材料になります
全国調査の定年退職給付額との比較

厚生労働省「就労条件総合調査」では、定年退職者(勤続20年以上・45歳以上)の退職給付額の平均は、大学・大学院卒(管理・事務・技術職)で1,896万円(令和5年調査)。ただしこれは企業規模を問わない集計で、企業年金の現価額を含む場合があるため、東京都の中小企業モデル退職金(約1,000万〜1,100万円)と単純比較はできません。それでも、企業年金の厚い大企業ほど水準が高い傾向は各種調査で一貫しています。
差が生まれる主な理由:
- 基本給水準の差(退職金は基本給連動の設計が多い)
- 企業年金(確定給付年金・確定拠出年金)の上乗せの有無
- 支給率カーブそのものの違い
なお、中小企業でも中退共(中小企業退職金共済)に加入している会社は、掛金月額×納付月数ベースで確実に支払われる仕組みになっています。
自分の退職金を正確に知る3ステップ

相場より大事な「自分の数字」の調べ方です。
- 退職金規程を読む:就業規則とセットで閲覧できるはずです(会社には周知義務があります)。「支給条件(勤続何年から)」「計算式(基本給×支給率×退職事由係数が典型)」「自己都合の減額率」の3点を確認
- 会社に試算を依頼する:人事・総務に「退職金の試算がほしい」と言えば出してくれる会社が多いです。退職を切り出す前に聞きづらい場合は、規程の計算式に自分の数字を当てはめれば概算できます
- 中退共加入なら会社に加入状況を確認:掛金月額と納付月数を会社に確認し、中退共サイトの試算表で概算します。退職後は本人が中退共へ請求し、会社経由ではなく本人名義の口座へ直接支払われます
確認のタイミングは退職を決める前が鉄則です。「あと1年で支給率が上がる」「勤続3年まであと2か月」のようなケースでは、退職日を少しずらすだけで数十万円変わることがあります:退職日はいつがいい?
相場より少ない・もらえないときに考えること

- そもそも制度がない:違法ではありません。求人票や雇用契約書に「退職金あり」と書かれていたのに支払われない場合は話が別です(詳しくは:退職金がない・もらえないのは違法?)
- 自己都合減額が効いている:規程どおりなら適法です。ただし、退職理由が実質的に会社都合(退職勧奨・ハラスメント等)なら、離職票の理由と合わせて争う余地があります
- 懲戒解雇を理由に不支給と言われた:規程に不支給条項があっても、全額不支給が常に認められるわけではありません。労働局や弁護士に相談を
- 税金は退職所得控除で大幅に軽くなる:勤続20年以下は年40万円、20年超の部分は年70万円の控除があり、この記事のモデル金額が控除内に収まるケースは多いです。ただし同じ年に複数の退職金を受け取る場合や企業年金の一時金がある場合は計算が変わります。「退職所得の受給に関する申告書」を会社へ提出したうえで、個別に確認してください
退職前後のお金全体はこちら:退職したらやること完全ガイド/貯金なしで退職しても大丈夫?
よくある質問

勤続3年未満だと本当にゼロですか?
「勤続3年以上で支給」という規程の会社では、原則ゼロです。ただし規程次第なので、1年から支給する会社も、5年からの会社もあります。中退共加入企業は掛金納付12か月以上から支給があります(24か月未満は掛金相当額を下回ります)。
パート・契約社員にも退職金はありますか?
規程で対象を正社員に限定している会社が多いのが実情です。ただし中退共はパートも加入でき、近年は同一労働同一賃金の観点から支給対象を広げる会社もあります。雇用契約書と規程を確認してください。
退職金はいつ振り込まれますか?
規程に支払時期が定められており、退職後1〜2か月が一般的です(中退共は請求から3週間〜1か月程度)。労働者から請求があった場合、賃金は7日以内という労基法の原則がありますが、退職金は規程で定めた支払時期が優先されます。振り込まれない場合は会社→労基署の順で確認を。
自己都合と会社都合でどのくらい違いますか?
完全に規程によります。自己都合に低い支給率(係数)を設定している会社では、同じ勤続年数でも数十万〜100万円以上の差になることがあります。自分の会社の「退職事由係数」を規程で確認するのが確実です。
退職金の平均額と中央値は違いますか?
平均は一部の高額例に引っ張られるため、体感の「普通」より高めに出がちです。この記事の中小企業モデル退職金は「標準的な労働者のモデル値」なので、実感に近い目安として使えます。
まとめ
- 退職金は法律の義務ではなく、会社の規程がすべて。制度がない会社も約2割
- 中小企業・自己都合の目安:10年で約100万円、20年で約300万円台、定年で約1,000万円。大企業の定年は約1,900万円と、およそ2倍の差
- 支給率は後半ほど急カーブ。節目の直前退職はもったいないことがある
- 自分の数字は退職金規程→会社に試算依頼→(中退共なら)加入状況の確認の3ステップで。退職を決める前に
- 税金は退職所得控除が大きく、モデル水準なら控除内に収まる例が多い(申告書の提出だけ忘れずに)
相場は「自分の会社を評価する物差し」として使ってください。規程を読んで、試算して、それから退職日を決める——この順番なら、もらい損ねはありません。
※本記事は2026年8月時点の公的調査(厚生労働省「就労条件総合調査」、東京都「中小企業の賃金・退職金事情」等)をもとにした一般的な目安です。実際の支給額・条件は必ず勤務先の退職金規程でご確認ください。
