高年齢雇用継続給付とは?60歳で賃金が下がったときにもらえる給付
60歳で定年を迎え、再雇用で働き続けることになった——そのとき多くの人が直面するのが、賃金の大幅な引き下げです。
この落差を一部補うのが、高年齢雇用継続給付です。あまり知られていませんが、条件を満たせば65歳になるまで毎月受け取れます。
ただし、2025年4月から支給率が縮小されました。いつ60歳になるかで金額が変わるため、そこを含めて整理します。
この記事は2026年8月時点の情報です。支給率は2025年4月1日以降に受給資格要件を満たす人から変更されています。制度は段階的な見直しが予定されているため、最新の内容と個別の金額は管轄のハローワークでご確認ください。
どんな制度?対象になる人

高年齢雇用継続給付は、60歳以降も働き続ける人の賃金が大きく下がった場合に、その一部を補う雇用保険の給付です。
主な要件
- 60歳以上65歳未満の雇用保険の一般被保険者であること
- 雇用保険の被保険者期間が通算5年以上あること
- 60歳時点の賃金と比べて、賃金が75%未満に低下していること
3つ目がポイントです。「60歳を過ぎて給料が下がった」だけでは足りず、75%未満まで下がっている必要があります。たとえば60歳時点で月30万円だった人なら、22万5,000円未満になったときが対象の目安です。
2種類あります
| 高年齢雇用継続基本給付金 | 高年齢再就職給付金 | |
|---|---|---|
| どんな人 | 離職せずに働き続けている人 | 基本手当(失業保険)を受けたあと、再就職した人 |
| 期間 | 60歳到達月から65歳に達する月まで | 支給残日数に応じて最長2年(65歳到達月まで) |
同じ「賃金が下がったときの給付」でも、離職を挟んだかどうかで名前と扱いが変わります。
なお、65歳以降に離職した場合は、また別の制度になります(65歳以上の高年齢求職者給付金)。
いくらもらえる?2025年4月の改正

ここがいちばん大事な変更点です。
2025年4月1日以降に受給資格要件を満たす人は、支給率の上限が「最大15%」から「最大10%」に引き下げられました。
2026年8月時点の支給率(2025年4月以降に要件を満たした場合)
| 60歳到達時等の賃金月額に対する、各月の賃金の割合 | 支給額の考え方 |
|---|---|
| 61%以下 | 原則として各月の賃金額の10% |
| 61%超〜75%未満 | 所定の計算式により10%から逓減 |
| 75%以上 | 支給なし |
計算のイメージ
60歳時点で月30万円だった人が、再雇用で月18万円(60%)になった場合、61%以下にあたるので、
18万円 × 10% = 月18,000円
が支給されます(支給限度額などに抵触しない前提の概算です)。以前の制度なら15%で27,000円だったので、月9,000円の差が出る計算になります。
注意点
- 2025年3月31日までに要件を満たしていた人は、従来の支給率が適用されます。自分がどちらかは、60歳に到達した時期で確認してください
- 支給額には上限額と下限額があり、これらは原則として毎年8月1日に改定されます
- 賃金が支払われた月ごとに判定されます。月によって賃金が変動すれば、支給額も変わります
この制度は段階的に縮小し、将来的に廃止する方向が示されています。長期の生活設計を立てるときは、この給付を前提にしすぎないほうが安全です。
申請のしかた

原則として、会社が手続きします
高年齢雇用継続給付は、事業主(会社)を通じて申請するのが基本です。自分でハローワークへ行く必要は、通常ありません。
大まかな流れ
- 60歳に到達したとき、会社が60歳到達時等賃金証明書などをハローワークに提出する
- 60歳時点の賃金月額が決定される
- 賃金が75%未満に下がった月について、2か月ごとに会社が支給申請する
- 支給決定され、指定口座に振り込まれる
自分でやるべきこと
- 会社に、この制度の手続きをしているか確認する
- 手続きされていない場合は、制度の存在を伝えて依頼する
ここが実務上の落とし穴です。会社が手続きを失念していると、給付は始まりません。「再雇用で給料が下がったのに何も振り込まれない」という場合は、まず会社に確認してください。
なお、本人が直接申請できる場合もあります。会社が手続きに応じない、対応が分からないといった場合は、管轄のハローワークに相談してください。
支給申請には期限があります。 さかのぼれる範囲には限りがあるため、気づいた時点で早めに動くことが大切です。
年金・再就職手当との関係

在職老齢年金との調整があります
働きながら特別支給の老齢厚生年金などを受けている人が高年齢雇用継続給付を受けると、年金の一部が支給停止されます。
2025年4月以降に要件を満たした場合、停止される年金額は最高で標準報酬月額の4%相当です(支給率の引き下げに合わせて、調整の幅も見直されています)。
つまり、給付を受けた分がまるまる手取りの増加になるとは限りません。年金を受けている人は、年金事務所にも影響を確認してください。
高年齢再就職給付金と再就職手当は、どちらか一方
基本手当を受けたあとに再就職した場合、次の2つが候補になります。
- 高年齢再就職給付金:賃金の低下分を、最長2年にわたって毎月補う
- 再就職手当:残っている給付日数に応じて、一時金としてまとめて受け取る(再就職手当の条件と計算)
両方は受けられません。どちらかを選びます。
- 支給残日数が多く、一時金の額が大きい → 再就職手当が有利になりやすい
- 賃金の低下幅が大きく、長く働く見込みがある → 再就職給付金が有利になりやすい
金額はケースによって逆転します。両方の見込み額を試算してもらったうえで選ぶのが確実です。窓口で「どちらが有利か試算してほしい」と伝えてください。
60歳前後の働き方を考えるなら
65歳前後で制度が変わる点もあわせて押さえておくと、判断しやすくなります(65歳以上の高年齢求職者給付金)。
よくある質問

給料が下がりましたが、75%以上あります。もらえますか?
もらえません。60歳時点の賃金と比べて75%未満に低下していることが要件です。
会社が手続きしてくれません。
まず制度の存在を伝えて依頼してください。それでも対応されない場合は、管轄のハローワークに相談してください。本人が申請できる場合もあります。
パートやアルバイトでも対象になりますか?
雇用保険の一般被保険者であり、被保険者期間が通算5年以上あるなど要件を満たせば対象になり得ます。加入状況を確認してください。
65歳を過ぎても受け取れますか?
受け取れません。65歳に達する月までが対象です。65歳以降に離職した場合は、高年齢求職者給付金という別の制度になります。
支給率が下がったのは、いつ60歳になった人からですか?
2025年4月1日以降に受給資格要件を満たした人からです。2025年3月31日までに満たしていた人には従来の支給率が適用されます。自分がどちらかは、60歳到達の時期をもとにハローワークで確認してください。
再就職手当と、どちらを選ぶべきですか?
支給残日数、賃金の低下幅、今後働く期間によって有利不利が変わります。ハローワークで両方の見込み額を試算してもらい、比べてから決めてください。
まとめ
- 高年齢雇用継続給付は、60歳以降に賃金が75%未満へ下がったときに、その一部を補う制度
- 要件は、60歳以上65歳未満・雇用保険の被保険者期間が通算5年以上・賃金が75%未満に低下
- 2025年4月1日以降に要件を満たした人は、支給率の上限が最大10%(それ以前は最大15%)
- 働き続ける人は「基本給付金」、失業保険を受けてから再就職した人は「再就職給付金」
- 申請は原則として会社経由。手続き漏れが起きやすいので、会社に確認する
- 在職老齢年金との調整があり、再就職手当とはどちらか一方の選択になる
制度は縮小方向にあります。対象になりそうな人は、いま自分がどの支給率なのかを早めに確認しておいてください。
※本記事は2026年8月時点の情報です。支給率・上限額・調整の内容は改正されることがあります。個別の金額や適用は管轄のハローワーク・年金事務所にご確認ください。
