退職給付金とは?正体は「失業保険+傷病手当金」——条件・金額・広告の読み方を中立解説
SNSや広告で見かける「退職給付金」「社会保険給付金制度」「最大◯◯万円もらえる」——気になって検索した人に、最初に一番大事なことをお伝えします。
「退職給付金」という名前の単一の公的制度は、存在しません。
この言葉は多くの場合、雇用保険の基本手当(失業保険)や健康保険の傷病手当金など、以前からある公的制度の組み合わせを指す通称・マーケティング用語として使われています。つまり「知らない秘密の給付金」ではなく、条件を満たせば誰でも自分で申請できる、普通の制度の話です。
この記事では、退職給付金の正体、もらえる条件と金額の目安、「最大28か月」「200万円」という数字の意味、自分で申請する方法を、業者に肩入れせず中立に解説します。
この記事は2026年8月時点の一般的な情報です。制度の適用は個人の状況によります。正確な判断はハローワーク・加入先の健康保険にご確認ください。
「退職給付金」の正体:組み合わせの通称

広告で「退職給付金」「社会保険給付金」と呼ばれているものの中身は、ほぼ次の公的制度です。
| 通称で含まれる制度 | 正式な制度 | 窓口 |
|---|---|---|
| 失業保険 | 雇用保険の基本手当 | ハローワーク |
| 傷病手当(在職中〜退職後) | 健康保険の傷病手当金 | 協会けんぽ・健保組合 |
| 訓練中の給付 | 職業訓練受講給付金・教育訓練給付など | ハローワーク |
紛らわしい用語がもう1つあります。会計・人事の世界の「退職給付」(退職金・企業年金のこと)です。企業の退職金制度の話は別物なので、こちらを調べたい人は:退職金の相場と計算方法
押さえるべき本質は2つ:
- 国に「退職給付金」という申請窓口はない。あるのはハローワーク(失業保険)と健康保険(傷病手当金)
- これらは全部、自分で無料で申請できる制度である
もらえる条件:あなたはどのパターン?

「退職給付金の条件」と呼ばれているものは、実体の制度ごとの条件です。ざっくり2パターンに分かれます。
パターンA:元気で、次の仕事を探す人 → 失業保険
- 雇用保険に原則、離職前2年で通算12か月以上加入(特定受給資格者等は1年で6か月)
- 働く意思と能力があり、求職活動をしている
- 金額:離職前6か月の賃金から算出した賃金日額のおよそ50〜80%(60〜64歳は45〜80%、上限・下限あり)。所定給付日数は年齢・加入期間・離職理由により原則90〜360日

パターンB:心身の不調で今は働けない人 → 傷病手当金(→回復後に失業保険)
- 健康保険の被保険者(会社の社会保険に加入)で、業務外の病気・ケガで労務不能
- 連続3日の待期を含む4日以上の休み、給与が出ていない
- 金額:標準報酬月額をもとにした日額の約3分の2、支給開始から通算1年6か月まで
- 退職後も続けるには「継続1年以上の加入」など追加要件あり

うつ病・適応障害などのメンタル不調も対象になり得ます。広告の「働けない人向け給付金」は、ほぼこの傷病手当金のことです。
対象外になりやすい人:国民健康保険の自営業・フリーランス(傷病手当金の制度が原則ない)、雇用保険の加入期間が足りない人、扶養内パートで自分が被保険者でない人。詳しくは:傷病手当金がもらえないケース一覧
「最大28か月」「200万円」の数字の正体

広告でよく見る数字には、明確な内訳があります。
- 「最大28か月」=傷病手当金の通算1年6か月(18か月)+回復後に失業保険の受給期間延長を使って受け取る基本手当(最長330日≒10か月前後)を、理論上フルに繋いだ場合の合計です
- 「200万円」「◯百万円」=上記を月額十数万円で受け取り続けた場合の合計額の試算例です
つまり、一定の前提を置いた試算であり、「すべての条件を満たした人が、最長・最大で受け取った場合の理論値」です。実際には、傷病手当金は労務不能と認められる期間だけ、失業保険は所定給付日数だけ。誰でも28か月・200万円もらえるわけではありません。
この「28か月」の仕組みと現実的な条件は、こちらで詳しく検証しています。

自分で申請する方法:窓口は2つだけ

「申請が複雑」と言われがちですが、窓口は2つに整理できます。
①今働けない(療養が必要)な場合
- 退職前に医療機関を受診し、労務不能の状態を診断してもらう
- 在職中に傷病手当金の受給を開始するか、退職日までに待期完成などの受給要件を満たす(退職日は出勤しない・継続1年以上の被保険者期間を確認。支給決定が退職前に完了している必要まではありません)
- 退職後は「継続給付」として受給を続ける:退職後の傷病手当金
- 失業保険は「働けない間」は受給できないため、受給期間延長を申請して権利を保全
- 回復して働ける状態になったら、延長を解除して失業保険へ
②すぐ働ける場合
- 離職票を受け取り、ハローワークで求職申込み:離職票の受け取り方
- 待期7日(自己都合は+原則1か月の給付制限)を経て受給
- 早く再就職が決まれば再就職手当も
どちらも手数料は無料。書き方が不安でも、ハローワークと健保の窓口は申請の書き方を無料で教えてくれます。
「サポート業者」を使う前に知っておくこと

「退職給付金サポート」「申請サポート」をうたう民間サービスがあり、料金体系は定額制や受給額連動型など事業者によって異なります。
- 業者が使うのも、この記事で説明した公的制度そのものです。業者経由でしかもらえない給付金は存在しません
- 料金を支払えば、そのぶん手元に残る給付金の総額は減ります。総支払額・返金条件・解約条件を書面で確認しましょう
- 労働・社会保険諸法令に基づく申請書等の作成・提出代行・事務代理を、報酬を得て業として行えるのは、原則として社会保険労務士(法人)です。一般的な情報提供との線引きは、サービスの実態で判断されます
- 一方で、「何から始めればいいか分からない」「制度の全体像を整理してほしい」という不安に、伴走者がいる安心感を感じる人がいるのも事実です
判断の目安:まず無料の窓口(ハローワーク・健保・自治体・労働局)と、当サイトのような解説記事で全体像をつかみ、それでも第三者の支援が必要と感じたら、料金と契約条件を書面で確認して比較検討してください。「怪しい?」の見分け方は次の記事で詳しく:給付金サポートは怪しい?料金相場と自分でやる方法
よくある質問

「退職給付金」でググっても公式サイトが出てきません
存在しない制度名だからです。公式情報は「雇用保険 基本手当(ハローワークインターネットサービス)」「傷病手当金(協会けんぽ・健保組合)」で検索してください。
会社を辞める前に申請できますか?
傷病手当金の退職後の継続給付には、退職日までに継続1年以上の被保険者期間があり、退職日時点で受給しているか待期完成などの要件を満たしていることが必要です(支給決定まで済んでいる必要はありません)。失業保険は退職後の手続きです。「退職前に相談だけ」なら、在職中でもハローワーク・健保に無料でできます。
自己都合退職でももらえますか?
失業保険は自己都合でも対象です(待期7日+原則1か月の給付制限あり)。傷病手当金は退職理由ではなく「労務不能かどうか」で決まります。
パート・アルバイトでも対象ですか?
勤務先の社会保険・雇用保険に加入していれば対象になり得ます。扶養内で自分が被保険者でない場合、傷病手当金は対象外です。
公務員も「退職給付金」をもらえますか?
常勤の公務員は退職手当制度との関係で雇用保険の適用除外となるのが一般的ですが、非常勤・臨時職員などは任用形態によって雇用保険が適用される場合があります。適用除外でも「失業者の退職手当」や共済組合の傷病手当金など別体系の制度があるため、所属の人事・共済組合に確認してください。
まとめ
- 「退職給付金」という単一の公的制度はない。実体は失業保険+傷病手当金(+訓練給付)の通称
- 条件は実体の制度ごと:働ける人は失業保険、働けない人は傷病手当金→回復後に失業保険
- 「最大28か月・200万円」は理論上の最長・最大値。全員がもらえる額ではない
- 申請窓口はハローワークと健康保険の2つだけ。すべて無料で自分で申請できる
- サポート業者が使うのも同じ公的制度。まず無料の窓口と情報で全体像を掴んでから判断を
「退職給付金」という言葉に出会ったことは、むしろチャンスです。この機会に実体の制度を正しく知れば、業者に頼らず、あなたが本来受け取れるものを取りこぼさずに済みます。
※本記事は2026年8月時点の一般的な情報です。受給可否・金額はハローワーク・加入先の健康保険の判断によります。個別の状況は各窓口にご相談ください。
