「会社都合にしてくれない」ときの対処法|離職票の異議と判定基準
「実質クビなのに、退職届を出せと言われた」「パワハラで辞めたのに、離職票は自己都合になっていた」——この差は、金額にして数十万円になることがあります。
給付制限の有無、必要な被保険者期間、所定給付日数。どれも離職理由で変わるからです。
そして重要なのは、離職理由を最終的に判定するのは会社ではなく、ハローワークだということ。会社の記載に納得できないなら、異議があることを申し出られます。この記事で、その具体的な進め方をまとめます。
この記事は2026年8月時点の一般的な情報です。離職理由の判定はハローワークが個別の事実関係に基づいて行います。深刻なトラブルは労働局・労働基準監督署・弁護士等にもご相談ください。
判定が変わると、ここまで違う

まず、争う価値があるのかを確認しましょう。「会社都合」は日常語で、制度上は特定受給資格者(倒産・解雇等による離職)や特定理由離職者という区分で扱われます。
| 一般の自己都合 | 特定受給資格者 | 特定理由離職者 | |
|---|---|---|---|
| 給付制限 | 原則1か月あり | なし | なし |
| 必要な被保険者期間 | 離職前2年間に12か月 | 離職前1年間に6か月でも可 | 離職前1年間に6か月でも可 |
| 所定給付日数 | 90〜150日 | 年齢と被保険者期間により手厚くなる場合がある | 離職日・区分により扱いが異なるため個別確認 |
| 国民健康保険料 | 通常 | 軽減の対象になる場合がある | 軽減の対象になる場合がある |
差が出るのは金額だけではありません。そもそも受給できるかどうかが変わることもあります。入社1年未満で辞めた人は、12か月を満たせなくても6か月なら足りる、というケースが典型です。
なお、特定理由離職者は、必ずしも特定受給資格者と同じ所定給付日数になるわけではありません。ここは期待しすぎないでください。日数の考え方は失業手当のもらい方完全ガイド、金額の計算は失業保険はいくらもらえる?を参照してください。
特定受給資格者と認められる基準

「ひどい会社だった」という主観ではなく、定められた基準に当てはまるかで判断されます。そして共通して重要なのが、その事情によって離職したこと(因果関係)です。
倒産等により離職した場合
- 倒産に伴って離職した
- 事業所において大量雇用変動の届出がされた、または一定割合を超える離職が生じたことにより離職した
- 事業所の廃止に伴って離職した
- 事業所の移転により、通勤が困難になったため離職した
解雇等により離職した場合
- 解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く)により離職した
- 労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職した
- 賃金(退職手当を除く)の額の3分の1を超える額が、支払期日までに支払われなかったことにより離職した
- 賃金が、支払われていた賃金に比べて85%未満に低下した(または低下することとなった)ため離職した
- 離職の直前6か月間のうちに、時間外労働が「連続する3か月で1か月あたり45時間」「いずれか1か月で100時間」「連続する2か月以上で月平均80時間」のいずれかを超えたため離職した
- 妊娠中・出産後の労働者、子の養育や家族の介護に関し、事業主が法令違反の不利益取扱いをしたため離職した
- 職種転換等に際して、職業生活の継続のために必要な配慮を行っていないため離職した
- 有期労働契約の更新により3年以上引き続き雇用されるに至った場合に、契約が更新されないこととなったため離職した
- 有期労働契約の締結に際し更新されることが明示されていたのに、更新されないこととなったため離職した
- 上司、同僚等からの故意の排斥、著しい冷遇または嫌がらせを受けたことによって離職した
- 事業主から直接または間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した
- 使用者の責めに帰すべき事由による休業が引き続き3か月以上となったことにより離職した
- 事業所の業務が法令に違反したため離職した
特定理由離職者にあたる主な場合
- 有期労働契約の期間が満了し、更新を希望したにもかかわらず合意に至らず離職した(雇止め)
- 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷などにより離職した
- 妊娠、出産、育児等により離職し、受給期間延長措置を受けた
- 家庭の事情が急変したことにより離職した
- 配偶者や扶養すべき親族との別居生活の継続が困難となったことにより離職した
- 結婚、育児、事業所移転、住所変更などにより通勤が不可能または困難となって離職した
- 企業整備による人員整理等で、希望退職者の募集に応じて離職した
太字にした時間外労働の時間数は、覚えておく価値があります。「時間外労働が月80時間を超える状態が3か月続いた」といった状況は、感覚的には珍しくないのに、基準に該当し得ることを知らないまま自己都合で処理されているケースが少なくありません。
なお、時間数に該当すれば自動的に認定される、というものではありません。その時間外労働が原因で離職した、という関係が必要です。また、ここでいう時間外労働は制度上の集計であり、日常語の「残業」とは一致しないことがあります。
心身の不調が理由の場合はうつ病・適応障害で退職したときの失業保険も参照してください。
異議があるときの具体的なやり方

手続き自体は、拍子抜けするほど簡単です。
ステップ1:離職票-2の記載を確認する
事業主が記入した離職理由の欄と、その具体的事情を確認します。ここで納得できない場合に、次へ進みます。
ステップ2:離職者記入欄を、きちんと埋める
離職票-2には、離職者本人が記入する欄があります。「異議あり」に印をつけるだけでは足りません。
- 自分が主張する主たる離職理由の該当項目を選ぶ
- 具体的事情記載欄(離職者用)に、離職までの経緯を自分の言葉で書く
- 事業主の記載内容に異議の有無を示す
- 所定の欄に署名する
様式や記入方法は改定されることがあります。交付された離職票の記載と、管轄ハローワークの案内に従ってください。
ステップ3:資料をそろえてハローワークに提出する
主張を裏づける資料があるほど、判断は動きます。
| 主張したいこと | 有効な資料の例 |
|---|---|
| 過重な時間外労働があった | タイムカード、勤怠記録、業務メールの送信時刻、入退館記録 |
| 賃金の不払い・大幅な低下 | 給与明細、雇用契約書、就業規則 |
| 労働条件が求人と著しく違った | 求人票、労働条件通知書、雇用契約書 |
| 退職勧奨を受けた | 面談のメモ、メール、録音 |
| ハラスメントがあった | メール、チャット、日記、診断書、社内相談の記録 |
| 体調不良による退職 | 診断書、通院記録 |
ステップ4:ハローワークが事実関係を確認する
ハローワークは、必要に応じて会社に照会します。双方の主張と資料をもとに、離職理由が判定されます。会社の言い分がそのまま通るわけではありません。
「異議なし」で出してしまった場合も、相談はできます。 ただし、当初の記載と異なる説明をする理由や、裏付けとなる資料を求められることがあります。納得していないなら、受給手続きの時点でその旨をはっきり伝えておくのが確実です。
離職票そのものの見方は離職票とは?見方と注意点にまとめています。
会社が嫌がる理由を知っておく

なぜ会社は「自己都合にしてほしい」と言ってくるのか。理由を知っておくと、交渉のときに冷静でいられます。
1. 一部の助成金に影響することがある
雇用関係の助成金の中には、所定の期間中に事業主都合の離職者が一定数以上いないことを要件とするものがあります。会社側にとっては、これがいちばん現実的な理由です。
ただし、「会社都合の離職者が1人出たら、すべての助成金が一律に不支給になる」わけではありません。対象となる助成金、離職区分、人数や割合、確認する期間は制度ごとに異なります。会社側の説明を鵜呑みにする必要はありません。
2. 対外的な評価を気にしている
「解雇を出した会社」という記録が残ることを避けたい、という動機です。
3. 慣習で機械的に処理している
深く考えず、退職届が出ているから自己都合、と処理しているケースも実際にあります。
押さえておきたいのは、これらはすべて会社側の事情だということです。 あなたが不利益を受け入れる理由にはなりません。
そして、会社を説得しなくても手続きは進められます。ハローワークに事実と資料を提出すればいい、というのがこの仕組みの要点です。ただし、ハローワークが会社へ照会することがあるため、申し出た内容が会社に伝わる可能性はあります。まったく波風が立たないとは限らない、という点は理解しておいてください。
なお、退職届を出した=自己都合で確定、ではありません。退職勧奨を受けて書式上「一身上の都合」と書かされた、というケースは実態で判断されます。
処分に納得できないときは

1. まずは窓口で理由を聞く
どの資料をどう評価してこの判定になったのか、確認してください。追加で出せる資料があれば、それで判断が変わることもあります。
2. 雇用保険審査官への審査請求
離職理由を前提として行われた受給資格の決定などの「処分」に不服がある場合は、各都道府県労働局に置かれた雇用保険審査官に審査請求ができます。
原則として、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内です(正当な理由がある場合の例外はあります)。
対象となる処分と起算日は、処分の通知書または労働局で確認してください。窓口担当者の説明すべてが、そのまま不服申立ての対象になるわけではありません。
3. 労働問題そのものとして相談する
未払い残業代、違法な解雇、ハラスメントなど、離職理由の判定とは別に争える問題がある場合もあります。
- 未払い賃金・違法な残業 → 労働基準監督署への相談
- ハラスメント → ハラスメント退職の証拠の集め方
- 解雇の有効性そのものを争う → 弁護士・労働局のあっせん
時間との勝負になる点に注意
離職票が届いてから動くのではなく、在職中から資料を集めておくのが最も確実です。退職後にタイムカードや業務メールを取得するのは、急に難しくなります。
よくある質問

退職届を出してしまいました。もう自己都合で確定ですか?
確定ではありません。ハローワークは、書面の形式だけでなく実際の事情を確認して判定します。退職勧奨を受けて提出した場合などは、その経緯を具体的に伝えてください。
会社に「会社都合にしてください」と頼むべきですか?
頼んでも構いませんが、応じてもらえないことも多く、必須でもありません。ハローワークに事実と資料を提出するほうが確実な道です。
証拠がまったくありません。それでも異議を伝えられますか?
伝えられます。資料がある場合ほど有利ですが、本人の申立てをもとにハローワークが会社へ照会することもあります。まず窓口で事情を説明してください。
判定が出るまで、どれくらいかかりますか?
事案によります。会社への照会が必要な場合は時間がかかることがあります。その間も、求職活動や認定日の手続きは通常どおり進めてください。
会社都合になると、転職で不利になりませんか?
離職票を応募先に提出する義務はありません。面接で退職理由を聞かれた場合の説明は必要ですが、倒産・整理解雇などは本人の責任ではないと理解されるのが一般的です。
契約社員の雇止めはどう扱われますか?
更新を希望したのに合意に至らなかった場合は特定理由離職者に、3年以上引き続き雇用されていた場合や更新が明示されていた場合は特定受給資格者にあたることがあります。更新を希望した記録が残っていると有利です。
まとめ
- 離職理由を最終的に判定するのは会社ではなくハローワーク
- 判断は主観ではなく定められた基準による。その事情によって離職したという関係(因果関係)が必要
- 代表的な基準は、時間外労働(連続3か月で月45時間/1か月100時間/2か月以上平均80時間)・賃金の3分の1超の不払い・85%未満への低下・退職勧奨・故意の排斥や嫌がらせなど
- 手続きは、離職票-2の離職者記入欄で主張する離職理由を選び、具体的事情を書いて署名し、資料を出すだけ
- 「異議なし」で出したあとも相談はできるが、受給手続きの時点で伝えておくのが確実
- 処分に不服なら、知った日の翌日から原則3か月以内に雇用保険審査官へ審査請求できる
争うのは会社ではなく、書類の記載です。窓口で事実を伝えることから始めてください。
※本記事は2026年8月時点の一般的な情報です。離職理由の判定はハローワークが個別に行います。個別の事情は管轄のハローワーク・労働局にご確認ください。
